自分のことだけを考える人を自己中心的な人、利己の人という。
その反対に、
他人の幸せを先に考える人のことを、利他の人という。
オレがオレが、私が私がと自分の利益を先に考える人は、
人がどんどん離れていき、まわりの協力を得られず、やがて運から見はなされる。
利他の心を持った人は、
協力者や仲間が一人ずつ増え、やがて運も味方してくれる。
「人からお礼を言ってもらえれば、それだけ徳を積める」
人の喜ぶことを先にする利他の人でありたい。
二宮尊徳は、親戚の川久保民次郎に、下男として働いてもらっていた。
民次郎が一家を構える年になったので、地元へ帰すことになった。
尊徳は、民次郎に、人の間で生きていくための心がけを話した。
「たとえば、腹が空いた人が他人の家に行って、
“ご飯を食べさせてください”と言っても誰も食べさせてはくれない。
しかし、空腹を我慢して庭の掃除をしてから頼めば、食べさせてくれるかもしれない。
この心がけがあれば、困った時でもなんとかなるだろう。」
続いて、
「私が若い頃、鍬(くわ)が壊れてしまった。
隣家へ借りに行ったら、
“畑を耕して、菜の種をまくところじゃ。終わるまでは貸せないよ”
と断られた。
そこで、
“その畑を耕してあげましょう。耕し終えたら、ついでに種もまきましょう”
と言って作業を終えた。
隣家の老人は、ニコニコ顔で、
“鍬だけでなく足りないモノがあったら何でも言ってくれ、いつでもいいよ”
と心を開いた。」
尊徳は、さらに言った。
「お前は、まだ若いから、毎晩、寝る前に草鞋(わらじ)を一足つくれ。
それを、草鞋の切れた人にやるがよい。
それで、お礼を言ってもらえれば、それだけ徳を積める。
この道理をわきまえて、毎日、励めば必ず道は開ける。」
民次郎は、すっかり感心して、明るい顔で郷里へ旅立った。
*1分で感動から転載
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