一個の細胞の中の遺伝子は、
目覚めていて機能する部分と、眠っていて機能しない部分があります。
けれど、眠っている遺伝子が永久的に眠っているかといえばそうではないし、
目覚めて機能している遺伝子が死ぬまで働き続けるかというと、そうでもありません。
遺伝子の機能は、電灯のスイッチのように、つけたり消したりできるのです。
では、眠っている遺伝子と目覚めて働いている遺伝子は、どう違うのか。
一言でいえば、
目を覚ましている遺伝子はタンパク質やタンパク質をもとにした酵素をつくることができますが、
眠っている遺伝子にはそれができないということです。
遺伝子がタンパク質や酵素を「つくる・つくらない」ということを、私は遺伝子のスイッチの「オン・オフ」と表現しているのです。
眠っている遺伝子のスイッチをオンにすることができれば、
私たちが「こうあってほしい」と望むようなことは、ほぼ100%可能といってもいいと思います。
それどころか、頭で考えて「こんなことはダメだろう」と思うようなことも可能にする能力を、
私たちの遺伝子は持っていると考えられます。
科学的に見た可能性の限界など、まったく意味がありません。
人間の想像をはるかに超えた情報が、遺伝子には書き込まれているのです。
人間という存在を遺伝子レベルで見れば、
学校の成績が良かろうが悪かろうが、身体が強かろうが弱かろうが、99・5%以上は誰でも同じです。
能力に差があるとすれば、
遺伝子を眠らせているか、目覚めさせているかの違いだけです。
その違いは、心のありようや環境などによって生じます。
人との出会いや環境の変化などによって、眠れる遺伝子のスイッチがオンになるとき、
人は生きながらにして生まれ変わることができるのです。
人間の可能性を妨げる要因として、
アメリカの心理学者A・H・マズローは次の6項目を挙げています。
1.いたずらに安定を求める気持ち
2.辛いことを避けようとする態度
3.現状維持の気持ち
4.勇気の欠如
5.本能的欲求の抑制
6.成長への意欲の欠如
これはそのまま遺伝子の目覚めを、妨げる要因と考えていいでしょう。
伸びる人とは、眠れる遺伝子を呼び起こすことがうまく、
それが下手な人は、能力や才能を持ちながらも伸びきれない人です。
※『スイッチ・オンの生き方』より
村上和雄(筑波大学名誉教授)
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