かれこれ23年も前から続いているのですが、女子刑務所の仕事をしているんですよ。
5年、10年と続けるうちに、だんだんとこの仕事に使命感が芽生えてくるんですね。
話を聞いていると、旦那がトンズラしたとか、離婚状を突きつけて家を出ていったのが悪いとかという具合に、罪を犯した原因を自分以外のところに求めている。
私にもいたらないところがあったのかもしれないとは、なかなか考えられないんですね。
だから、ものすごく苦しんでいて、そこから抜け出せずにいる。
それに対して以前の私は、相手の話に相槌を打つだけでしたが、思うところがあって、
ある時から「あんたも悪い」とはっきり言うようにしました。
そうしたら、驚いたことに受刑者のほうが素直に頷くんですよ。
その時に思ったんです、彼女たちは本当のことを言ってほしいのだと。
心の底では自分が悪いと思っているから、「あんたも悪い」と言われると気持ちが楽になる。
いままで誰も彼女たちと本気で向き合う人がいなかったのでしょうね。
確かに彼女たちは悪いことをしたわけですが、彼女たちにはまだ30年とか、50年近い人生が残っているんですよ。
ですから
「幸せにならなあかんで、 幸せになる権利を持っているんやで。 素直になりや。出発点は自分も悪い。 ここからやで……」
と話すうちに私も胸いっぱいになってくる。
するともう相手はみんな自分の子供みたいに思えてくるんです。
だからいろんな話を聞いて、真剣に応えてあげる。
西端 春枝(真宗大谷派淨信寺副住職)
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